事件(若草物語)


巻頭に宮部みゆきのエッセイ付きバージョン。
(3回に渡って出ていて、その度に加筆、修正されているとの事。巻末のあとがきより)
宮部みゆきがそう言ってるだけで、そうなのかという説得力。さすがです。


それもそのはず、丁寧に、緻密に、裁判のあれこれが書かれているのだ。
都会にそう遠くない町で起こった事件で、その裁判の様子をドキュメンタリーの様な視点で話進んで行く。

検察、裁判官、弁護士、被告人、証人、‥あれこれ、裁判に関わる人々を第3者目線、(ナレーションの様な)で、仕組みや段取りの説明なども交えて進めて行く。

最初は、その訥々とした書き方に慣れず、このまま淡々と話が進んで行くのなら、最後まで読めないかもしれないと、ひやひやしていた。
この丁寧さでないと、出来ないことがあるんだなと、関心したわけです。
↓こんな感じ。
(ネタバレがやんわり含まれます、)







うう〜。ちょっと読むのしんどいかも。(昔っぽい感じもあるし‥)淡々とし過ぎて、この分厚さでこれで最後までいくの‥?不安。
え、ちょっと、ちょっと、そうなの?!
え、もう少し読んでおきたいけど、休憩時間終わるで!?気になりすぎて、手がとまらへんで‥!
ああっ  はやく仕事おわれ〜っ
さっき、あんなことがあったし、また最後になんかあるかも、このまま終わるの??!
‥いろいろ、不安しか残らへんやん‥?



って感じでした。
読んでる途中は、やはり菊池弁護士と宏に感情移入するので、希望のある終わりを期待してしまう。
ただ、これは事件なのだから、

何日か経って思うのは、それだけの事をしたので、それは一生ついて回り、ひたすらに、答えをだせないことが、答えなのかとも思う。
どの様に、共存して行くか、かな。もう、答えてくれる人がいなくなってしまったのだから。

事件 (創元推理文庫)

事件 (創元推理文庫)

京セラフィロソフィ 哲学

分厚いです。

だって、フィロソフィですもの。


哲学の書です。


私、普段はしがない雇われ店長でして、

ビジネス書も、わりと読みます。

ちょっとでも、自分に合う方法で、まさにこれならと心を打ち、かつ指針に加えることか出来る部分かないのかと、広大なビジネス書の海を時には彷徨います。(わがままな考えなのは承知しております‥)


今回はお借りしたものなのですが、松下幸之助さんの本を読む機会はいままで何度かあり、また違った感想を抱きました。


まだ1冊目なので、他はどうなのかわからないですが、稲盛さんの、考えや哲学に触れたいのだけれども、その稲盛さんの哲学を後押しするルーツなる、お話や、ブッダや、宗教、そういった箇所もあるので、

やはりこれはフィロソフィなのかなと、読みながら考え至った次第です。


自分の感想を率直に申しあげますと、ヒントや学びには飢えているけども、自分の哲学は自分で得たい、まさに典型的なB型の私には、少しウェルダンな内容で、うぐっ

と、苦しみながら拝読させて頂いた次第です。

(こんな事を感想に書いてしまうと、理解して読んでいないなとお叱りを受けそうですが、確かに拝読いたしました)‥だからそれが、と延々ループが続きそうですので、私の葛藤はさておき。



必要な時に、必要な箇所を読み解く、場合なよっは何度か、その箇所を読み返す、という使い方が正解なのかもしれません。

(たしか、そのような事も書かれていた)

小説の様に、読もうとしたら、最後まで読み通すのに1ヶ月費やしたのでした。


経営のお話や、正しいお商売をすると、シンプルでロジカルな部分はなるほどなと、読みやすいところも多かったです。


京セラフィロソフィ

京セラフィロソフィ


かたづの!

 

良かった‥

こんな歴史小説もあるのかと、思ったし、読めて良かった。



愛があるのは、語り手がねねさまの事を、愛しているからだと思うのですが、

それが人ではない視線から見るので、重苦しくなり過ぎず、率直で素直な様子が可愛く感じてしまう時もあり、時として、その感性に悩む様子もあり‥。


時折挟まれるかたづのの羚羊としての営みが、のびのびと、種差の砂浜や野山を駆け回り、妻を愛して、と生きる様が‥なんと美しいのかと。

儚さと、煌めきが織り込まれて、本筋とは違うところでなんとも言えない、胸の震えをを覚えた。岩手のあの美しい景色が目に浮かぶ。


歴史小説なのだと思うけど歴史小説のセオリーにとらわれない、暖かさが溢れて、それは舞台が遠野、岩手とみちのくだったからなのか。


手塚治虫の漫画や、銀河鉄道の夜の様な、人ではないものの世界観から人の世を見る不思議。

それが、実際の出来事とその世界の出来ごとと、上手く当てはめられて、おもしろく、楽しめる。






個人的に、岩手に旅行をした機会があり、

私は関西に在住だが、あのなんとも言えない浪漫が漂う、みちのく。

また行きたい!次は、遠野だな!と心に決めた作品でした。


かたづの! (集英社文庫)

かたづの! (集英社文庫)


教団X

 まず最初に‥


ミステリーとか、エンターテイメントとか、思って読んだら全然違いました。


砂の王国

神の子は皆踊る


こんなかんじなのかな?と思って(上記2作も、フィクションとノンフィクションでまたテイストが違うのですが‥)

読み始めて、性描写が多いので、あれ?なんかおかしい?

開始100ページ目辺りでこの慣れない内容に我慢できなくり、教団Xを検索。

あ、そういうことか、これ、純文学というものかのか‥。

私の、数少ない純文学、実績にねじまき鳥クロニクル、(←おもしろかった)がある。



いや〜。そういう事なら、ちゃんと帯に書いて欲しかったな〜。(そういう訳にもいかないでしょうけど)

 不可解なまま3/1は過ぎてしまったけど以降、納得の上で読み進めると、読みやすくなった。

ただ、後半は、謎めいて書かれていたところもかなり暴かれるし、割と展開も早く、じっさい色んな人が目的を持って動き出すので、普段読むようなエンターテイメント小説のような感覚で読めた。


つまり、前半は教祖様のお話し(斜め読み)や、教団の日常?な話題になり状況の概要描写のようで、後半は色々説明をしたし、より個人に焦点があたりお話しが動き始める。

公安が出ると急に胡散臭さが増すのは、不思議だな〜。なんでもボックス的な。

警察小説とかで出てくるのは好きです!


若い登場人物達は、自分を否定したり、息苦しさを感じながら、生きていて、何者を読んだ時の様な、苦しさを覚えた。


正しい、正しくないは置いておいて、色狂いが一番、最後の主張で光ってた。一番、自分に正直な言葉で生きてた。

作中一番の清涼感だったと思う。


からくりサーカスフェイスレスのような爽快さ。信じれば夢は叶う!‥的な。


教団X (集英社文庫)

教団X (集英社文庫)


黄砂の籠城

  

進撃は1冊で、籠城は上下の2冊。


さて、今回は柴五郎中佐と一緒に行動した、櫻井伍長の視点で書かれる籠城側の話。

(厳密にいうと一緒に行動したとかではないのだけど‥)



最初に、ひとつだけ気になることが。

文中にある、日本人として生まれ、育つこと、連綿と繋がった文化とDNA?に自信をもてと。

培って来たものを大切にして。

そんな表現があり、登場人物が語る分には気にならないけど、その他の部分でそう言った言葉が出てくるとちょっと気になった。

この作品を読んだら、そこは充分伝わってくる。

なので、別に書かなくてもいいんじゃないかな〜。と。

近ごろ、こういうお話での、このような文句が溢れているからかもしれない。



それ以外はもう、ほんとうに良かった。

史実、人物に忠実にある程度書かれている?ので、なにも余計な事を言う必要がなく、それぞれの切実さが伝わってくるし、そこから感じとることもできる。


ほんとうに死んでしまうかもしれない、追い込まれた時に、なにが出来るか、なんのために動くことが出来るのか。

その不屈な姿勢はなにから生まれるのか、登場する人々全てを語り、見せる。(おもに柴五郎)

ほんとにここぞいまピンチというところで、さっそうと登場して、さらっとこなす柴五郎は櫻井伍長でなくても、惚れる。(そう書いてるのかな?‥過剰なくらい、かっこいいですよ。褒めてます。)



生い立ちや経験してきたこと、文化もあるかもしれないけども、それをいなし、ただしく発露出来るかはそのひとのちから。ただそれだけだと思う。

その勁さは、どのようにして、養うことが出来るのだろう。


この極限の状態で、自分の為だけではなく、誰かのために選択をされた、全ての方々に敬意を抱かずにはいられません。


黄砂の籠城(上) (講談社文庫)

黄砂の籠城(上) (講談社文庫)


主に警官と戦艦 佐々木譲



佐々木譲の警察小説が好きだった。
好んで読んだ時期があったので、今更一冊ずつ書くほど鮮明ではないけど、簡単に書いておく。

①笑う警官(道警シリーズ)
②警視庁から来た男
③警官の紋章
④巡査の休日
もとのタイトルは、うたう警官。
私が購入した時は既に笑う警官で、映画化の話題で沸いていた。正直、もとのタイトルの方がしっくりくる。というか、笑うとうたうでは全然意味が変わってくると思うのですが‥(最初タイトルの意味がわからわからなかった。後で、解説か何かの書評を読んで、もとはうたう警官と聞いてようやくすっきりした。)
警察小説っておもしろくて読みやすくて、その後手に取りやすくなったきっかけ。
これは、その後もシリーズが出てる。
①はとてもおもしろくて、それぞれのキャラクターも魅力的だったけど、続刊からあまり興味がなくなってしまったシリーズ。


⑤警官の血 上•下
⑥警官の条件
警官の血はメジャーかな?!メジャーだと思ってますが、上下ハードカバーで購入して読んだ。
それだけ、佐々木譲の警察小説が私の中で熱かった時。
道警シリーズは、ライトでそこそこ奥深く感じで読みやすいけど、警官の血はまさに血のように濃い。親子3代が警察官になった話。
(親子3代と、同期3人の絆の物語。絆が正しいのかわからないけど)
公安との絡みもあり、スタートする時代が、どこか混沌とした怪しい雰囲気があるのでそれだけでも読んでいておもしろい。
第3世代にもなると、さすがに現在の警察小説といった風にはなるけども、解決編(?)として、伏線がようやく回収されていく様子は、それぞれの苦悩を見た後なだけに、肩の荷が下りた気分になった。

警官の条件は、最後の笛の音に図らずしも鼻水とか色々でて止まらなかった。けっこう好きです。


⑦地層捜査
警官の血の怪しい雰囲気が好きなら、楽しめると思う。ただ、事件が痛ましいので、フィクションだとわかっていても、おもしろいとかいうか言葉が使いにくい。


⑧武揚伝  上 中 下
下巻では特に開陽丸や、回天、蟠龍がかわいく見えてくる不思議。(私は、これまでの人生で戦艦好きと思ったことは一度もなかったのですが。)
バンブルビーがかわいく見えるのと同じで‥
それはさておき。
楽しかった警察小説の延長に、同じ作家さんなのでどんなものかと読み始めたけども、読むのが辛かった。
淡々としていて、肝心の武揚もなかなか動きがないからだと。動いてはいるのですが、丁寧に書かれていて、それが読む手を妨げる‥専門書を読んでいるような感覚に襲われ、それが下巻の五稜郭まで続いた。
ようやく山は動き、戦いも終結を迎える。

最後に、佐々木譲の解説を読んだ。
榎本武揚を書くことによって、本人の研究も進み、彼への見方が改められたと。
これを読んで、色々が腑に落ちた。そういうことなんだと思った。つまり、榎本武揚、解説書なのです。
(楡の木は残った‥は、パラダイムをシフトする形だったけど、こちらは史実を淡々と重ねて形成されるものを見るって感じですかね‥。)

いっしん虎徹

花鳥の夢も読んだが、いっしん虎徹について今回は書く。


花鳥の夢の狩野さんは、かなりモヤモヤさせられましたが、こちらは虎徹の性格なのか、モヤモヤが少なく読みやすかった。


でも、それは興里の性格とかよりも、奥さん(ゆき)の存在が大きく、お話の中でも、お話の読みやすさ的にも、いい仕事をされてます。

今回も例によって、いっしんな職人さんならではの、苦悩はもちろんあり、書かれてはいるのだけど、ゆきの透明感が全体に爽やかさと、興里の人らしさを感じられる要素になっていて、読後感が軽くなった(非常に良い意味で)


いろんな、彼女と虎徹とのシーンがあるけども、それ以上に、最後のシンプルな一文が泣けた。


つまりこれは、私にとっては、虎徹が一振りに到達する事が主題なのではなく、虎徹とゆきのお話だったのだと思う。

いっしん虎徹 (文春文庫)

いっしん虎徹 (文春文庫)