当ブログについて

   読んだ本の事は大体書く予定なので、書き残したい事が、核心に触れてしまう恐れはあります。
ご注意ください。




プロローグ

ある日、本屋さんで、選びに選び抜いた筈の本が、読み始めると、実は読んだことがあった。

その本、読んだことあるし、表紙もなんとなく覚えてるけど、内容がさっぱり出てこない‥。
私はこの本を読んで、どんな想いを馳せたのだろう。

10年後くらい経つと、人は、ではなく、私は読んだ本を忘れてしまう様だった。(一応、覚えてるものわりとあるんですが‥)
読書を通じて、確かに感動し、素晴らしい時間を過ごしたはずなのに、忘れている、

そんな自分に愕然としたその日から、このブログは始まりました。まあ、つい最近ですけど。
忘れてたら、2度楽しめる気もしますけど。

手に取る事が多い本
‥ハードボイルド以外。
ただし、渋さとハードボイルドが混ざり合う境界の見分けは難しいと感じている。

・警察小説→近年は卒業気味
・ビジネス書
・ノンフィクション
・歴史、時代小説
・山岳小説

手に取らない傾向にある本
・恋愛小説
・純文学系
・優しさに溢れた自己啓発
・ポエム
・哲学。

熱源

熱源

熱源

2回読みました。


ただ、多くのひとに、読んでほしい。

どうしてそう、思ったのか考えた。

北海道と樺太と、ロシアとポーランド、そして日本。

スケールが大きく、その歴史のうねりを描きつつ、翻弄されながらも力強く生きたひとたちの話。



誰もが、経験した事があるのではないだろうか。

ほんとは、これで良いのかな?なんて思いながら、誰かの何かを、蔑ろにしてしまうこと。

大切だと思ってた、自分の何かを、蔑ろにしてしまうこと。

ほんの少し、喉にささったちいさなとげのように、残り続ける違和感。ずっと続く問いかけ。

登場する人達は、そんな気持ちを、容赦なく揺さぶってくる。



彼等は、ただ、私達に押し付けるでもなく、説くのでもなく、闘い続ける。

最初から、最後まで。

どうしてほしいなんて、言わない。

ただ、こうありたいと望み、叫んで、闘って。

どんな理不尽な事が、襲いかかっても。

生きてるから。

この熱に、なんど心を揺さぶられたか。



この物語の、実在の人物達、できごと。

その境界線は曖昧だけども、だからこそ、いまに繋がる部分がある。

彼等の軌跡がそこかしこで、確かに感じられる。

だから、愛しい。


決して、誰かをやり込めるのでもなく、

大きなうねりに晒されながらも、両脚を踏ん張って、自分になにが出来るか、それぞれが生きていた。



好きなシーンや、セリフもたくさんあるけど、

ジャガイモと家族を愛してるピウツスキのお父さんが好きだ。根菜先輩も2回め読むと、ご登場お待ちしておりました!ってなる。

でも、やはりこれをあげておく。



「もしあなたと私たちの子孫が出会うことがあれば、それがこの場にいる私たちの出会いのような、幸せなものでありますように。」




物語の熱によって、こんなに美しく、尊くなる言葉があるのかと、噛み締めた。

ただ、あなたと隣り合うときは、私とあなたは、ただの人同士だ。ただそれだけ。なんの、へただりもない。

ずっとずっと。


ヤヨマネクフというひとは、なんていうひとなんだろう‥。


キサラスイのこと、一緒に樺太に渡った、と言ったり、あんなに下手だったトンコリが、2度目の登場では、ものすごく上達していたり。

いつまでも、ピリカって、言ったりね。

樺太でも、彼女が、彼の心なかにいたんだなっていうのがすごく伝わる。

ちゃんと、すくってくれて、ありがとう。(私はキサラスイじゃないけどね。)

宝島

宝島


それでも、生きることの美しさ。
それに尽きる。

簡単には読書メーターの方に記録したが、どうしても気持ちが収まらず、感じたことをもう少ししっかりと残しておきたくなった。

沖縄が日本に返還されるまでの20年間が、体験出来る本。
読書、だろ?なんだけども、溢れる熱量に、いつの間にか巻き込まれ、気がつけば、広大な嘉手納基地の中を、戦果アギヤー達と共に息を切らしながら走っている。
虐げられた苦しみに、耐えきれず、声を上げだした人達に混ざって、どうして!!と叫んでいる。

群像の中の1人になったような体験。
あまりにも、それぞれが力強く、生命力に満ち満ちていて、苦しさも、遣る瀬無さもないまぜになっていくのだけど、積もり積もったそれらが、最後、
ウタの手紙で総てが洗い流されるのだ。

作中、多くを語らなかったウタが、どちらかというと鬱屈した感情を押し抱えているのかと思っていたウタが、この島の美しさを、生きることの喜びを、切々と訴えているのだ。



この手紙は、高畑監督のかぐや姫の物語を見たときの感覚を思いだした。
彼女は、生まれてから、彼女を取り巻く総てを、生きている事の喜びを、全身全霊で感じていたのだ。この世はなんて素晴らしいのだろう、なんて尊いのだろう!なんて、なんて‥!!
うまく言葉に出来ないのだけど、私は、そうか、そうなんだなと、思ったのだ。
そして、彼女の喜びに、涙がとまらなかったのだ。
それは、ウタの手紙も同じだった。


死ぬことが苦しい、生きることが苦しい、大切な人を失ってしまってくるしい‥
そんな苦しみに焦点を当てて、生きることへ昇華される話はたくさん出会ったけど、生きる事が尊くて、幸せで、
心が震えることも、たくさんある。
ほんとは、そう誰かに言って貰いたいのかもしれない。
だから、嬉しくて、そうだよね、って涙がでるのかもしれない。
物語だからこそ、夢をみたい。

あきさみよう、この言葉の意味は、後で色々調べてみても、正確には掴みきれなかったけども、この小説においては、折々にふれて使われる事で、どんな時にこの言葉が出てくるのか、自然に頭にはいっていた。
だからこそ、最後に効いてくるな。


とても良い本に出会えました。
ありがとうございました!



宝島

宝島

殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―


多くのひとに、読んでほしい。
多くのひとに、知ってほしい。

この本については、多くを語れない。
ノンフィクションだからだ。
あいだを想像で埋める事もない、事実だから。

そしていまも、おさめがたい、現状が続いているという事も。。



私も文庫Xのカバーで購入しました。
新手のミステリー小説かと思い、手にとったわけですが。
あのカバーでなければ、目にも留まってなかっただろうと思います。
こうして、多くの人が手に取るきっかけになった。
内容は、清水さんの一人称が、非常に感情移入しやすく、やりきれない思いと、憤りが伝わりすぎ、何度も、文字がぼやけました。

そこに辿り着くまでの、時間や労力がどれほどかかっても、事実ほど、誠実なものはないだろうと。


事象に対して、それをみる視点や、視野がほんとに正しいのかという事を、心に留めておく必要があると、改めて、思い知った。

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)

殺人犯はそこにいる (新潮文庫)


イモータル(不滅の書)



若い頃に手を出して、断念した本。
近くの本屋さんのお勧めコメントがあり、平積みされてた。

こういった、難しい本は滅多に手に取らないけども、
読んでみたいと思わせる、絶妙な帯と、カバー裏の紹介文。
こちらにつられる訳です。
'救い''救済'私が知りたいのはこれに尽きます。
(たぶん、そもそもの読み方を間違えてる気がする。)


パリの学者
古代文明の皇子様
サラリーマン

‥3つの主観でお話が構成されるのですが、以前はパリの学者で、挫折。
意図的なのだと思うのだけど、3人とも他者に対して、内気なんです。なんというか、世界が変わるのを待ってるようにみえる。。
そして状況は、より良くない方に、変わっていく。
読んでいて、いちばん読み進め辛いのは、この点に尽きると、3度めで、ようやく気づいた。


パリの学者先生の部は、やっと終わったかと思ったら、後でまた出てくる。
皇子もどんどん追い込まれるし、‥つらい。
サラリーマンも、相変わらず、すり減っている。


現実世界、実生活部分で、強かな一歩を、踏みしめてほしい!‥って気持ちでいっぱいになりながら、最後まで、読みきった。
智慧の書については、のめり込んでで挑んでいるのに‥。それが核なのだから、そうなのだけど。

サラリーマン編で、ついそういう気持ちになってしまう‥。
それに、奥様や、家族、側にいる人がつらい。それでは、つらいのです。
我慢しろといわれたら、それまでですが。
(エンタメ小説ではないと言われたらそれまでですし、私は歴史にも、哲学にも疎く、楽しみ方はやはりひと同士の営みに、向いてしまうわけで‥)

自分自身の、魂の救済に、愛する人や家族も、おざなりにする事なく、上昇する事ができるのか。ということ。
自分に向き合うべきは、もちろん自分自身だけども、この世で、誰とも繋がりを持たない、なんて事はなく、愛するひとの存在は、外側で関係ないことなんかではないと思うのだけど。


‥この小説から話がそれ過ぎた。
そして、私の思考は、テーマとは別の読感をたどり、

‥何が残ったか‥、
こぼれ落ちそうなくらい、満点の星空のイメージと、お兄さんのことだった。

イモータル (中公文庫)

イモータル (中公文庫)

天地に燦たり

本格歴史小説

普段、単行本はあまり手に取らないのだけど、こちらは縁あって発売日に購入。

最初はがっちがちの硬い感じなのかと思ったし、またもや最後まで読めるのか不安がよぎったけど、このお話は主人公が3人いて、いろんなことが、次から次へとどんどん動いていくのだ。明鍾がでてきたあたりからページをめくる手がとまらなくなっていた。
泗川の闘いでは手に汗がじんわり。

歴史の流れの中にいるのだから、怒涛の展開、それは当然なのかもしれないけれど、
私には、それが歴史小説の醍醐味。

その流れのなかで流れに巻かれながらも、負けないくらいの勁さで、足を踏ん張って、がんばっているひとたちの話だと思う。

それが、3にんぶん。

真摯に生きることは、どんな時代でも、もちろん今でも、苦労の形は違えど、困難なものだと思う。
ほんとに、とても。
それでも、そうすることで、ひとがきらめく姿が、まさに、燦たりであるなと、最後に表紙に戻りつつ、感じ入ったわけです。


沖縄の抜ける様な青空、そこに佇む守礼門
記憶のその景色を思い出すだけでも、いまはじんわりしてまう。
覚えていた景色の、価値が変わる、見方が変わる、
そんな読書体験でした。ありがとうって言いたい。



最後に。
表紙カバーを外すと、沖縄のびんがたがいちめんに印刷されてます。にくい演出だな〜。

天地に燦たり

天地に燦たり