宝島

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それでも、生きることの美しさ。
それに尽きる。

簡単には読書メーターの方に記録したが、どうしても気持ちが収まらず、感じたことをもう少ししっかりと残しておきたくなった。

沖縄が日本に返還されるまでの20年間が、体験出来る本。
読書、だろ?なんだけども、溢れる熱量に、いつの間にか巻き込まれ、気がつけば、広大な嘉手納基地の中を、戦果アギヤー達と共に息を切らしながら走っている。
虐げられた苦しみに、耐えきれず、声を上げだした人達に混ざって、どうして!!と叫んでいる。

群像の中の1人になったような体験。
あまりにも、それぞれが力強く、生命力に満ち満ちていて、苦しさも、遣る瀬無さもないまぜになっていくのだけど、積もり積もったそれらが、最後、
ウタの手紙で総てが洗い流されるのだ。

作中、多くを語らなかったウタが、どちらかというと鬱屈した感情を押し抱えているのかと思っていたウタが、この島の美しさを、生きることの喜びを、切々と訴えているのだ。



この手紙は、高畑監督のかぐや姫の物語を見たときの感覚を思いだした。
彼女は、生まれてから、彼女を取り巻く総てを、生きている事の喜びを、全身全霊で感じていたのだ。この世はなんて素晴らしいのだろう、なんて尊いのだろう!なんて、なんて‥!!
うまく言葉に出来ないのだけど、私は、そうか、そうなんだなと、思ったのだ。
そして、彼女の喜びに、涙がとまらなかったのだ。
それは、ウタの手紙も同じだった。


死ぬことが苦しい、生きることが苦しい、大切な人を失ってしまってくるしい‥
そんな苦しみに焦点を当てて、生きることへ昇華される話はたくさん出会ったけど、生きる事が尊くて、幸せで、
心が震えることも、たくさんある。
ほんとは、そう誰かに言って貰いたいのかもしれない。
だから、嬉しくて、そうだよね、って涙がでるのかもしれない。
物語だからこそ、夢をみたい。

あきさみよう、この言葉の意味は、後で色々調べてみても、正確には掴みきれなかったけども、この小説においては、折々にふれて使われる事で、どんな時にこの言葉が出てくるのか、自然に頭にはいっていた。
だからこそ、最後に効いてくるな。


とても良い本に出会えました。
ありがとうございました!



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